創業60年、グループ総勢120名。栃木県足利市・群馬県太田市・埼玉県の総合会計事務所

採用情報

会計ノウハウ Know-How

給与か外注か

(税金かわら版平成29年7月号再編)

個人の外注先への支払が「外注費」となるのか、「給与」となるのか。「税務」と「労務」の両面から総合的に判断します。

税務調査でよく問題になるのが、いわゆる「個人の外注先」に対しての支払が、本当に「外注費」なのか、実態は「給与」ではないのか、という点です。「給与」になるか「外注費」になるかで、税務上の取扱いが次の点で大きく異なります。
具体的には、「源泉所得税」「消費税」「社会保険」の取扱いです。

給与扱い 外注扱い
源泉所得税の天引き 必要あり 必要なし
確定申告
消費税の控除 不可 可能
社会保険の加入 対象 対象外
(原則)

「源泉所得税の天引き」の視点

給与に該当すると、会社(事業主)は支払金額から源泉所得税を天引きして支払わなければなりません。当然、手取り金額は減ります。それに対して、外注費に該当すると、手取り金額は減りませんが、もらった側は経費などとともに確定申告をする必要があります。

「消費税の控除」の視点

外注費に該当すると、支払者側(会社や事業主)は、税務署に納める消費税を計算する際、その外注費に係る消費税を差し引いて納付することができるので、その分、納付税額が少なくなります。それに対し、給与に該当すると、消費税は発生していないため、消費税額を差し引くことはできません。

「社会保険の加入」の視点

給与の場合には、社会保険に加入しなければならず、所得税と同様に支払金額から差し引く必要があるため、手取り金額は減ります。さらに、会社負担分を支払う必要もあるため、会社の資金負担が増えます。

「その支払が給与になるのか、外注費になるのか」をどう考えればよいのかですが、これはお金をもらう本人にとっては、税法上では「給与所得になるか、事業所得になるか」と言い換えることもできます。

過去の判決では次のように定義されています。

事業所得(払う側から言えば「外注費」)

自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得

給与所得(払う側から言えば「給与」

雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付 ※給与所得については、とりわけ、給与支払者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。

○最判昭和56年4月24日 国税庁HPより

ひとつの見方とすると、次のように言えます。

  • 事業所得とは「請負契約」に基づく所得
  • 給与所得とは「雇用契約」の基づく所得

この区分が明らかでない場合については、次の事項を総合勘案して判定することとされています。

  1. その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替えを容れるかどうか
    仕事を受けた側が急病等の理由で従事できない場合には、自ら他の作業者を手配し(他人が代替し)、その報酬はそもそも仕事を受けた側に支払われ、他の作業者にはそこから支払がある場合には、事業所得の要素(つまり外注扱いの要素)と言えます。逆に、仕事の発注者側において他の作業者を手配し、その報酬は直接、他の作業者に支払う場合には、給与扱いの要素と言えます。
  2. 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか
    作業の具体的な内容・方法等の細かな指示がなされている場合には給与扱いの要素と言えます。逆に、仕事の発注者が通常行う程度の指示であれば、事業所得の要素(つまり外注扱いの要素)と言えます。
  3. まだ引渡しを完了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか
    不可抗力(災害など)で引き渡し前の完成品が損壊した場合に、"支払ってもらえない"というのは、仕事の完成を目的とした事業所得の要素(つまり外注扱いの要素)と言えますが、"支払ってもらえる"とすると、給与扱いなのでは?となります。
  4. 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか
    特に工具・用具が自前かどうかは、事業所得(つまり外注扱い)となるか、給与扱いとなるか、の重要な判定要素となります。

具体的な判断基準【参考】

「個人の外注先」に対しての支払が、「外注扱い」なのか「給与扱い」なのかは、実務的に線引きが難しいのですが、日常的に出てくる判断として、次の9つの項目の総合勘案となります。 ただし外注扱いとする場合には、その個人の外注先が「事業所得として確定申告」していることは、重要な要素であり、大前提となりますので、ご注意ください。

給与扱い的判断基準 外注扱い的判断基準
(1)支払の根拠 時給・月給 業務請負的な単価決め
(2)請求書の発行 ない ある
(3)指揮監督 作業の具体的な内容・方法等の細かな指示 指示書などの交付にて通常程度の指示のみ
(4)支払の締日と支払日 一般支払の締日・支払日ではなく、社員の給料の締日・支払日 会社の一般支払の締日・支払日
(5)福利厚生(忘年会等) 会社の福利厚生費負担 本人の負担又は交際費
(6)工具・用具等の負担 会社の負担 本人の負担
(7)危険負担(材料の賠償等) 会社の負担 本人の負担
(8)残業手当や通勤手当・賞与 ある ない
(9)タイムカード・出勤簿など勤務管理 記入あり 記入なし

ある個人の外注先を「外注費」として取扱う場合、まず上記において、(4)から(9)までの項目が「給与扱い的判断」の方に該当すると、「外注費扱い」はかなり厳しくなってしまいます。また、(1)で「時給」や「定額の月給」になると、「外注費扱い」は厳しいと言えます。

逆に、(2)については業種や会社によっては、請求書の発行を要せず、会社の発行する「支払確認書」への押印にて、請求額を決定する場合もあるとは思います。

是非、この9項目を参考にしてください

CONTACT

お電話でのお問い合わせ

受付時間 9:00 ~ 18:000284-41-1365

Webからのお問い合わせ

mailお問い合わせ
page top